守り人

時は平安、花洛を騒がす魔物あり。 悪しき魔物、天を駆け、地を這い、水をくぐる。 猛き炎を集め、鋭き風を呼び、凍てつく水を操る。 都のものども、恐れおののき、ただただ神仏に祈るばかり。 華やかなる都、今ではさながら死の都と成り果てた。 時の帝、これを憂い神祇官に魔物の調伏を命ず。 神祇官、部下を率い、魔物に戦い挑む。 激しき戦い、七日七晩絶えることなく、ついに魔物は封印された。 しかるに戦いの傷深く、神祇官はその力を失った。 されば、封印を守るため、新たな守り人が求められる。 そのために選ばれし一人の女。 この女、従四位上 藤原某の娘にして、幼きころより神の加護を受け、人ならざる力を操る者。 そして、慈愛に満ちた、清流の如く汚れなき心根を持つ者。 その二つこそ、封魔の完璧を為すもの。 帝、社を建てさせ、二つの玉と女をもって魔を封ず。 代償は、贄と祈祷と女の「死」そのものと、そして豊かであったそのこころ。 かくして娘は、宿命を背負う。永遠の宿命を。 微笑むことを忘れ、語らうことを忘れ、 眠ることも食することも老いることも、死ぬことすら忘れ、 ただ、魔物の眠りを守ることのみ、自らの仕事とす。自らの宿命とす。 それから幾年月が流れ、都が崩れ去り、記憶が消え去れども、 娘の想いは今もなお、人々の営みを守り続けている。