乙女の加護を受けし者

世が乱れるとき、戦乙女は地上に降り立つ。 世界帝国がゆっくりと、だが確実に解体しつつあったその時代、一人の戦乙女が地に降りた。 彼女はその澄んだ瞳で一人の青年を見初めた。 貧乏貴族の次男坊。 かつて世界帝国に滅ぼされた王国の末裔。 金もなく、権力もなく、何も持たぬ青年。 あるのは誠実と勇敢と、世の乱れを憂う心のみであった。 「汝は不義を働かぬか」 「汝は卑怯未練を働かぬか」 「汝は死を恐れぬか」 彼女は問う。 青年は無言で頷く。 その毅然たる表情を見、戦乙女は微笑んだ。 かくして青年は力を得た。 どのような財宝でも購うことのできない、どのような軍勢でも打ち破ることのできない力を。 戦乙女は誠実を貴ぶ。 戦乙女は勇敢を貴ぶ。 だか彼女が青年を見つめる瞳の奥には、それ以外の感情があったという。 二人は動乱の世に出た。 世界帝国の三分の一を切り取り、大陸に覇を唱えることになる彼の激しき半生は、こうして始まった。 後に聖王と呼ばれた彼の傍らには、常に戦乙女が控えていたという。 あたかも青年の貞淑なる妻であるかのように。