その娘が現れたのは、男と仲間たちが森の中で野営をしているときだった。 戦斧を構える娘は、凛とした声を上げる。 『あなた達が神殿で犯した罪、神の名においてその体に問う!』 思い出した。 しばらく前、路銀稼ぎに神殿を襲撃したことがあった。金目のものと聖遺物は奪い取って、捕らえた女は遊んでから殺した。 追手がかかるかもしれないとは思っていた。しかしそれがこんな小娘とは思わなかった。 相手は女一人。チェインメイルを着てはいるが、装備は軽装。戦斧を持っていたとて、所詮あの細腕だ。恐れることなど無い。 男たちは余裕な様子で得物を片手に娘に近づく。殺すな捕らえろ。若いし器量もいい。ちょうどいい玩具が手に入る。 ほんの二呼吸の後に、男たちはその考えが甘かったことを思い知らされた。 仲間の首が、こげ茶色の噴水を撒き散らしながら宙を舞う。 その様に、ある者は怖じ気づき、ある者は躍起になって娘に襲い掛かった。 そして彼らはすべからく、斧の冷たい刃を体に味わい、命を森にぶちまけた。 もはや最後の一人となった男は、その様子を呆然と見つめていた。戦意なぞとうの昔に失われている。 そんなはずはない。小娘ごときが何故あれほど強い。眼前の出来事は、うつつの中のことなのか。 立ち尽くす男は見た。 娘が自分に駆け寄るのを。 その澄んだ瞳の奥に、剣のように鋭い光が閃くのを。 そして彼女のからだがほのかに光をまとっているのを。 あれが神に祝福を受けた光か… 自分に振り下ろされる戦斧の、空気を切り裂く不気味な音を聞きながら、男はそんなことを考えた。 そして男の記憶は断絶した。