彼女が数え年で16の春、父が死んだ 一人娘だった彼女は、当然の成り行きとして 父の後を継いだ 皇帝の玉座を継いだ そして、父のやり残したことを継いだ 即位間もない彼女の初の仕事は、北辺諸国に対する親征だった 心やさしく内気な娘は、今や帝国の左右12軍の旗頭となった 血と死のにおいをはらんだ風が吹き、黒雲たなびく戦場を眼前に見渡し、彼女は自問する 何故わたしはこんな所にいるのだろう 何を為そうというのだろう 何を求めているのだろう 押し殺した想い いまだ実感できない己が境遇 空虚な心に風が吹き抜ける 突然ラッパの音が響いた はっと我に帰る 側近が彼女を促す 若き皇女は片手を高く掲げ、まだ幼さの残る声で命令を発した 「全軍、突撃せよ」 それは、後の世に「遠征女帝」として語り継がれることになる彼女の 最初のいくさであった